第3章 緊急被ばく医療
1.わが国の医療被ばくの現状 3)緊急被ばく医療で放射線管理士に期待されるもの □ 緊急被ばく医療体制の構築は、初期被ばく医療、( )、( )の3段階方式である。 二次被ばく医療
三次被ばく医療□ 外来(通院)診療を念頭においた医療が( )である。 初期被ばく医療体制 □ 入院診療を念頭においた医療が( )である。 二次医療被ばく体制 □ より専門的な入院診療を要するのが( )である。 三次医療被ばく体制 □ 緊急被ばく医療体制は、一般の救急医療体制、災害医療体制の一部に組み込まれて機能することが実効 的である。 4)放射線管理士の役割 □ 放射線管理士の役割は
1)患者や救護所などで被災者の汚染測定を確実におこなう。
2)汚染測定の結果を具体的に、その被災者の近傍に1時間いるとどれくらい被ばくするかを説明する。
3)汚染測定に必要な機器の取り扱いに習熟している。
4)汚染測定機器のメンテナンスをおこなう。
5)汚染患者受け入れのために必要な養正を医療機関の処置室や患者搬入廊下でおこ なう。
6)汚染患者を処置する医療者の汚染、放射線防護のための適切な防護技術や個人線 量計を事故状況に応じて助言する。
7)汚染の主な放射性核種名が情報提供されたとき、患者を処置する医療者に核種の性質などについて説明する。
8)汚染患者の処置を行っている医療者にタイミングよく汚染管理の助言を行う。
9)汚染患者の処置に使用した医療機器やガーゼ、除染に使用した生理食塩水を管理する。
10)処置室の患者のX線撮影をポータブル撮影機を汚染させることなく行う。
11)処置室から患者や医療者が退出するとき、汚染検査を確実に行う。
12)使用後の処置室の汚染検査を行う。1)放射線事故の概略 □ 1994年から2000年の間に( )件の放射線事故がおこり、3003人が有意の被ばくを受け、( )人が死 亡している。 417
127□ 放射線事故というと、原子炉を思い浮かべるが、原子炉事故の発生件数は全体の2 %であり、放射線事故 の種類別件数では( )による事故が最もおおい。 密封線源 □ 1)原子炉事故 2)再処理施設事故 3)臨界事故 4)その他の事故に分けて年代
事故の特徴を必ず記録しておくこと。各自お願いします。 過去に起こった放射線事故からの教訓 □ 重要な教訓は次のようである。
1)放射線事故は、突然、思いがけない場所や状態から発生し、その多くはヒューマンエラーに関係している。
2)緊急被ばく医療体制は、常日ごろから準備されていないと有効に機能しない。
3)一般の人々にとって、シーベルトやベクレルなどの放射線の単位は非常に難解である
4)緊急被ばく医療においては、強力なリーダーが一人必要である。
5)原子力災害時の情報は、的確に時機を逸することなく一元的に提供される必要がある2)緊急被ばく医療の手順 □ 2001年6月に原子力安全委員会から発表された、「緊急被ばく医療のあり方について」の理念は
1)「いつでも、どこでも、誰でも最善の医療を受けられる」という命の視点に立った救急医療、災害医療の原則に立脚する。
@命の視点に立った対応
人命尊重を最優先。被ばく医療の対象として原子力施設の従事者と周辺住民などとを区別すべきでない。
A包括的で一次元的な対応
原子力施設における緊急事態のみならず放射性同位元素の使用施設などにおける被ばくや汚染も対象とする
2)救急医療、災害医療に携わる人々にとって不安を与えない医療体制であること。
3)緊急被ばく医療は原子力安全のセーフティネットである。b 緊急被ばく医療体制 □ 緊急被ばく医療機関の整備は、次の事項を満足することが望ましい。
1)放射線防護に対する正しい知識を有すること。
2)緊急被ばく医療の実践が可能な救急医療機関または災害医療機関であること。
3)原子力施設からの搬送および他の緊急被ばく医療機関への転送が容易であること。
4)診療放射線技師などの放射線に対する知識を有するものを活用でき、かつ原子力緊急事態の発生に際 しては災害対策本部の応援要請ができること。
5)被ばく医療に対し医療関係者の理解があり、緊急被ばく医療のネットワークに参画する意志があること。3)放射線事故時の線量評価 □ 個人線量評価は被ばくの4形式に従い
@外部被ばくの線量評価
A体表面汚染の線量評価
B創傷部の線量評価
C内部被ばくの線量評価
に分けられる。□ 外部被ばくの線量評価には
@全身被ばくの線量評価
A局所被ばくの線量評価
がある。□ 外部被ばくによる局所被ばくの線量評価は、線源の強さ、線源からの距離、被ばく時間から計算する方法や 個人線量計の読み、皮膚症状から推定する方法がある。 □ 体表面汚染はGM計数管、シンチレーションサーベイメータなどで計測する。体表面汚染密度を算出し被ばく 線量評価をおこなう。 □ 内部被ばくの線量評価はホールボディカウンタや肺モニタ、甲状腺モニタによる測定、口角、鼻腔スミアの計 測による体内汚染量の推定、尿や便中の放射性核種の測定による内部被ばく線量推定などがある。 □ 創傷汚染ではα核種による汚染の場合には汚染部位を特定するために傷モニタをもちいる。 □ 環境中の放射線量の評価法には
1)空中線量率の測定
2)空気中汚染濃度・水中汚染濃度・土壌中汚染濃度・食物中汚染濃度などの測定
3)表面汚染密度の測定
がある。汚染測定の原理と測定方法 サーベーメータの選択 □ β線のみを放出する核種に適する測定器は( )である。 GMサーベーメータ □ β線とγ線を放出する核種には適する測定器は( )である。γ線測定用の( )も使用可能である。 GMサーベーメータ
シンチレーションサーベイメータ□ シンチレーションサーベイメータはエネルギー依存性があるため核種が不明の場合には定量性がなくなる。 これに比べ電離箱サーベイメータはエネルギー依存性が少なく空間
γ線線量率測定には適している。しかし、電離箱サーベイメータは感度が劣るため汚染部位のサーベイには 向かない。□ α線を出す核種に適する測定器には( )または( )である。 ZnSシンチレーションサーベイメータ
CsIシンチレーションサーベイメータ汚染のサーベイ □ 測定器のRENGEスイッチを( )にして測定を開始する。 最小 □ TIME CONSTSNT(時定数)は( )secを選択する。同一場所を( )sec間(時定数の3倍)計測しない と正確なメータの読みは得られない。 10
30□ カウント音は( )でモニタする。 イアホン □ プローブは体表面から( )cm離し、毎秒2〜3cmのスピードで移動させる。 1〜2 □ 創傷部位は注意を要する。α、β線は血液が付着してると計測できなくなる。 □ 事故後早期であれば、必ず( )、( )を湿った綿棒でぬぐい薄いビニール袋に入れ、これをプローブに密 着させて計測する。(鼻腔スミア法) 鼻孔 鼻腔 □ 鼻腔スミア法で計算されたBqの約( )倍が吸入されたと考えられる。 40 体表面汚染密度の評価(cpmからBq/cm2への変換) □ 緊急時では放射性核種が不明の場合は、線源効率を( )%として計算する。 50 □ cpmからBq/cm2へ変換するには機器効率と( )を考慮した換算係数が必要になる。 線源効率 □ 60Coの体表面汚染で22000cpmあったとして、換算係数を0.09(Bq/20cm2/cpm)、プローブの開口 部を20cm2とするとBq/cm2はいくらになるか? 22000×0.09/20
=99Bq/cm2皮膚線量の評価 □ 100cm2を越す皮膚面に100Bq/cm2の60Co汚染があったとすると、皮膚1cm2が受ける1時間あたりの吸収線量はいくらか?ただし、皮膚吸収線量率は1000(nGy/h/Bq/cm2)とする。 皮膚1cm2が1時間あたりに受ける吸収線量は
100(Bq/cm2)×1000
(nGy/h/Bq/cm2)
=100000nGy/h
100000nGy/h
=100μGy/h□ 皮膚に1度の急性放射線皮膚障害を起こす線量は( )Gyである。 3〜4 体表面汚染から医療従事者が受ける外部被ばく線量 □ 汚染患者に接する医療従事者は通常防護服や防護マスク、メガネ、手袋などを着用するためβ線は遮へい される。 □ 医療従事者の被ばくは( )線を考えればよい。 γ □ 汚染面積100cm2、汚染密度100Bq/cm2として60Co汚染部位から30cm離れた医療従事者の受け る線量を計算せよ。ただし、円形線源のときの60Coの30cm部位での1cm線量当量定数は4.1(μSv/h )(MBq/m2)とする。 汚染量は
100×100(Bq)
=10000Bq=0.01MBq
30cmでの線量
0.01MBq×4.1(μSv/h)(MBq/m2)
=0.041(μSv/h)
□ また汚染面から1cmのところで指の受ける線量はいくらか?ただし距離1mでの1cm線量当量定数は0.347(μSv/h)(MBq/m2)とする。 0.01MBq×0.347×100×100=34.7(μSv/h) 除染 健常皮膚の除染 □ 中性洗剤とぬれガーゼでふき取り、少量の水で洗う。EDTA入りの洗剤は洗浄力が強い。 □ 非汚染部位から汚染中心にむけてふき取る。 □ 汚染面にオレンジオイルを塗布し、2分放置してからガーゼで繰り返しぬぐいとる。
オレンジオイルを使っても汚染が低くならない場合は可動性の汚染がなくなったと判断できる。□ 汚水タンクのある施設では流水を用いやわらかいブラシやガーゼでふきとる。 □ 冷水は毛孔を閉じて放射性物質をその内に閉じてしまうので適当に温かい水道水を使用する。 □ 熱湯は毛細血管を拡張させその部分の血流を増し、毛孔を開き、皮膚を通じて放射性物質が吸収されるリスクが高まる。 □ 水道水で効果がない場合は、中性洗剤か外科用石鹸を用いる。汚染部分を3〜4分間ブラッシングし、2〜3分間水すすぎ、乾かす。効果がない場合はオレンジオイルや水で10倍に希釈した次亜塩素酸ソーダを使用する。 □ より強力な除染方法として角質を除去する手段がある。目の細かいサンドペーパやチタンペーストを用いる。4%過マンガン酸カリウムを作用させた後に4%チオ硫酸ソーダを用いる方法もある。 □ 頭髪の除染はぬれた紙タオルでぬぐった後シャンプーする。 汚染した傷の処置 □ とるべき処置は、放射性物質の半減期、毒性、放置した場合の預託線量が( )mSvを越すか否かによって異なる。
20 □ α核種による体内被ばくは、βγ核種に比較して( )倍発癌リスクが高い。 1万 □ 汚染した傷を生理的食塩水を注射筒でフラッシュしたり3%過酸化水素水でゆっくり洗う。 □ 除染処置が不十分の場合は傷口から出血を促進して放射性物質の排除を助けるため、圧迫帯を用いる方法もある。 □ しばしば、局所麻酔下でガーゼによるブラッシングや創面のデプリードメントが必要になる。 □ 創傷面をメスで切り取り、良好な肉芽の発達を促す外科的手技を( )という。 デプリードメント □ 切除された組織片は保健物理的測定のために保管する。 □ 可動性の汚染が除去できたならば終了する。バックグラウンドまでにする必要はない 身体開口部の除染 □ 口腔内に入った場合は、錬り歯磨きで歯をみがく。その後3%のクエン酸溶液ですすぐ。 □ 咽頭部のときは3%の過酸化水素溶液でうがいする。 □ 飲み込んだ場合は胃洗浄。 放射線事故時の健康相談 □ 人に放射線があたると電離作用を起こし、酸素機能の低下や( )が生ずる。 細胞分裂の遅延 □ 放射線が生体を通過すると一連の反応がおこる。すなわち、物理的過程、化学的過程、生化学的過程、( )である。 生物的過程 □ 物理的過程は生体内構成原子・分子の( )と( )である。 励起
電離□ 物理的過程で生じた遊離基が相互作用により( )を経て生化学的過程を導き最終的に( )をもたらす。 化学的反応
生物的反応□ DNAの損傷には塩基損傷、( )、DNA鎖の切断、架橋形成がある。 塩基の遊離 □ 損傷があっても修復過程がはたらき( )の損傷を最小限にとどめようとする。 DNA □ 修復過程とは損傷の修復、損傷を受けた塩基の除去修復、組み換え修復、修復酵素のかかわるSOS応答、主鎖切断の修 復機能などである。 □ 細胞周期の中でも放射線感受性が高い時期はG1期(ギャップ)から( )(DNA合成期)への移行期と細胞分裂の( )期 である。 S
M□ S期の後半では細胞は( )となる。 放射線抵抗性 □ 細胞は放射線によって染色体異常や突然変異をおこし、細胞死や悪性形質への転換がおこる。 □ 最近では( )と呼ばれる従来の壊死とは違った細胞死(細胞自滅)があり、DNAが修復できないような場合、細胞分裂には 進まず死への自滅をたどる。 アポトーシス □ 組織の中で最も感受性の高い部位は( )である。0.5Gy以上の急性被ばくで早期に機能低下がみられる。 造血系 □ その他、生殖腺、眼の( )も感受性が高く、男性生殖腺で一時的不妊になるのは0.15Gyである。 水晶体 □ 卵巣は感受性が低く一時不妊は( )Gyといわれている。 4 □ 紅斑を生じるのは数Gy以上である。 □ 被ばくした人のうち50%が60日に死亡する線量を( )という。 半致死線量 □ 3Gy程度が半致死線量といわれてきたが、チェルノブイリ事故では( )Gy以上が半致死量であった。 6 □ 胎児に対する被ばくで重度精神遅延がおこる線量は受胎後8〜15週で0.1Gy、16〜25週で0.2Gyと計算される。 □ UNSCEARでは低線量は0〜0.2Gy、中線量は0.2〜2Gy、高線量は2〜10Gy
超高線量は10Gy以上としている。□ UNSCEARでは低線量率は0.05mS/min以下、中線量率は0.05mSv/min以上0.05Sv/min以下、高線量率は 0.05Sv/min以上としている。 □ 高線量あるいは高線量率の影響を低線量・低線量率に外挿する場合の線量・線量率低減係数(DDREF)を適用するのは 0.2Gy以下、6mGy/hとしている。 □ ICRPでは低線量という場合には0.2Gy以下、低線量率は0.1Gy/hとしている。