実空間と周波数空間

実空間と周波数空間とは?

 いままでの話の中で空間周波数の意味を説明しました。文献や参考書を読んでいると、画像処理の中で空間周波数ではとか実空間ではなどの言葉がでてきます。この周波数領域での表現と実空間とはどのように違うのかを簡単に説明します。
 実空間とは単なる普通の画像のことです。パソコンの中から見える画像は縦横のピクセル(たとえば128×128)で示された画像です。この画像を単に実空間の画像と呼んでいるだけです。実空間でフィルタをかける?この意味は、普通の画像に3×3や64×64とかのピクセルで表したフィルタを使用して数学的処理をすることなのです。ここでどのような方法であるのかは核医学画像処理の基礎で述べたように重畳積分(コンボルーション積分)をおこなえばよいのです。この方法は数式では難しい積分の式を用いていますが、数式など考えないで実際の方法を覚えれば簡単にできます。
 数十年前は、前処理フィルタは1次元フィルタをかけると言っていました。いまは2次元フィルタです。1次元、2次元フィルタ・・・・2次元フィルタは先に述べたような縦横の正方形のピクセルので、1次元とは横に並んだピクセルの固まりなのです。
 次は周波数空間の話です。前の実空間(実際の画像)のカウントの変化(濃度変化)をグラフに描いてそれを離散フーリエ変換すれば、この画像の周波数特性が求められます。この離散フーリエ変換も参考書では難しく書いてありますが、方法さえつかんでしまえば数式など不要です。
 実空間のカウントを調べてそれを離散フーリエ変換すれば、その画像の周波数特性が求まります。この周波数特性を離散逆フーリエ変換と言う手法を用いれば、もとの実空間の画像がもとまります。
 いままでの話は、1次元(画像の1ピクセル分の水平方向だけ)についての説明でしたが、2次元(縦横)方向(はじめは横方向、次に縦方向の順)に離散フーリエ変換すれば、2次元での周波数特性が求まります。実空間に戻すにも2次元で離散逆フーリエ変換すればよいのです。
 言葉は難しいのですが、やってみると問題ありません。

 

画像処理には周波数領域と実空間での2つの方法がある

 前のページで画像のざらつきを無くすにはの話をしました。そのときにフィルタをかける話をしました。このときは3×3や64×64とかのピクセルで表したフィルタを用いて処理をすると述べましたが、これは実際の画像(マトリックスで出来ている画像)との処理ですので実空間で処理をしたことになります。
 周波数空間で処理をするには、実際の画像を離散フーリエ変換し、そのものと、実際のフィルタを離散フーリエ変換したものとを掛け合わせて(実際の画像の周波数×フィルタの周波数)やれば、フィルタ処理した周波数空間で表した画像が出来上がり、それを逆の手法(離散逆フーリエ変換)を用いて、実空間に戻してやれば、フィルタがかかった目に見える画像ができるのです。
 このように、周波数領域と実空間領域とは数学的な手法を用いれば、周波数で示した画像から実際の実空間画像ができ、反対に実空間画像から周波数空間に戻すことができます。

 

核医学画像に含まれる最高の周波数は?

 最高周波数とかナイキスト周波数の言葉を聞かれたことがあると思いますが、これは核医学画像に含まれる最も高い周波数であると記憶しておいてください。
 私たちの観察する画像はピクセルによって表現されています。1周期の正弦波を作るには1ピクセルではできません。最低2ピクセルが必要になります。一番細かな正弦波は、2ピクセルで1周期となります。したがって、この周期は2ピクセルであるので周波数は1/2=0.5(サイクル/ピクセル)となり、これが最高の周波数(最高周波数・ナイキスト周波数)と呼ばれています。
 したがって、これ以上の周波数はデジタル画像には含まれないことを理解しておいてください。
また、画像の周波数を表現するのに、文献やカタログを読むと、
横軸の表示が(サイクル/ピクセル)であるものや(サイクル/cm)で表示されているものがあります。
(サイクル/ピクセル)表示は、同じマトリックスでも有効視野の大きさで1ピクセルの大きさが違ってきますので、装置間の比較をするためにはちょっと不都合です。どこでも同じ尺度で比べられるのは(サイクル/cm)なのでしょう。この表示に注意して周波数特性を見てみましょう。

下に参考までに(サイクル/ピクセル)と(サイクル/cm)の換算式を示しておきます。


1ピクセルAcmとすると


(cycles/pixel)=(cycles/cm)×(A cm/pixel)


(cycles/cm) =(cycles/pixel)÷(A cm/pixel)