周波数について(2)

画像の続き

 前のページで多いRI量と少ない量の話をしました。こんどは体内に注射したRIで脳血流をしたとして話を進めます。ここの話も正確な表現ではないのですが、周波数の概要を理解することとしていますので間違えがあるのですがこのまま進んでください。
 脳血流をしたフィルム画像を先ほどと同じようにしてカウント(濃度)を測定します。すると、今度は先の平面の容器に入れたRI量の濃度を測定してるのではなく、色々な濃度から成り立つ脳の画像ですので、灰白質のように一様にRIが集積している部分や、それとは反対にまだらにRIが集積する部分もあるわけです。するとこの画像の中には、滑らかな濃度が変化する部分やまだらな集積でざらついている濃度変化の部分も混在します。このなかには色々な波の変化があることがわかります。
 この波の変化を先ほどと同じようにグラフに書いて、その波形を数学(離散フーリエ変換)を用いて計算すると単位あたりに変化するそれぞれの波の個数とその強さがでてきます。
 この画像のそれぞれの周波数を横軸にとり、縦軸にはその強さ(振幅の絶対値)をプロットしたのが周波数特性(MTFとか伝達関数とかで表現されることもある)になるのです。

画像に含まれる高い周波数の波をなくする

 前のページで画像のざらつきを無くすにはの話をしました。重複しますが、この画像の中に含まれている高い周波数の波を取り除いてやれば、最初の画像からは高周波数成分がなくなります。そうするとこの画像は先ほどよりは滑らかな画像になります。この滑らかにするのに前処理フィルタを用い処理するのです。前処理フィルタを元の画像に施すとかフィルタをかけるとかいいますが、これも数学的手法でおこないます。バターワースフィルタを使用するのも元の画像を滑らかにすることなのです。
 数学的な方法は、前処理フィルタのところで述べましたので詳しいことは除きますが、前処理フィルタとは元画像を滑らかな画像にするために用いるものなのです。

どこまでの高い周波数を取り除くのか?

 今度は、元の画像の高い周波数をどこまで取り除くのかについて書きます。これは難しい問題なのですがどうでもいいといえばいいのかもしれません。画像は臓器の濃度だけを忠実に表していれば、この画像に含まれる周波数は全てが臓器のもつ情報であると考えられるのですが、少量のRIで感度の悪いシンチレーションカメラとの組み合わせでは、臓器から出てくるγ線にも統計的な変動があります。
 シンチレーションカメラも出てきたγ線の量を忠実に測定できているわけではありません。同じ量のRIを容器に入れてシンチレーションカメラで撮影すると、同じだけのγ線を受け取るのですから、ピクセル当たりの濃度(カウント)は同じとならなくてはいけないのですが、出るγ線は元の量が同じでも時間的に変化していますから統計的な変動があります。これが統計的なノイズであり、臓器から出るγ線の中にこれが含まれるため、忠実な臓器の濃度を表わすことはできないのです。
 このようなことから、我々が観察している画像は、本来の臓器の情報にノイズが加わった画像であることが言えます。このノイズはざらついている成分ですので高周波成分です。ノイズはどの周波数成分であるのかがわかっていれば、前処理フィルターでノイズだけを取り除くことはできるのですが、ノイズのなかには臓器の情報も加わっているため、どこの高周波までを取り除いたらいいのかわからないのです。あまり低い周波数成分まで取り除いてしますと、臓器の情報もなくなってしまいますので問題です。このように前処理フィルターでどこの周波数まで取り除いてよいのかは誰もわからないことなのでしょう。経験的に判断するしかないでしょう。