核医学画像処理の基礎(2)


波形

マス目に整数(実数もあります)を入れたものがフィルタであると説明しまし た。その他にどのようなフィルタがあるか調べてみます。

先の平滑化フィルタは一般に低域通過フィルタといい、低域周波数はそのまま にして高周波数を滑らかに低下させ雑音(ザラザラ)を取り除くものらしいで す。え????周波数??先ほど周波数は後でと言ったのですが、ここに来て 周波数のことを少し入れないと説明できなくなってしまいましたのでこの話を 少しします。

はじめに周波数について説明します。高校で習った正弦波を思い出してくださ い。式ではy = sinθとなっていたことをぼんやりと記憶していることと思いま す。確かθは角度の単位……


θ=0°  のときはy = sinθ=sin0°  でsin0° =0だから y =0

θ=30° のときはy = sinθ=sin30° でsin30° =0.5だか ら y =0.5

θ=45° のときはy = sinθ=sin45° でsin45° =0.707だ からy =0.707

θ=90° のときはy = sinθ=sin90° でsin90° =1.0だか ら y =1.0

θ=180°のときはy = sinθ=sin180° でsin180°= 0だか ら y =0

角度θをつぎつぎに変化させてθとyの関係を図にしてみましょう。下の図 ができあがりました。ここで周期の定義をおぼえます。
周期とは波の山〜次の山(谷〜次の谷)までと約束されていますから、角度で 示すと周期は正弦波では谷〜谷までの360°が1周期になります。 周波数は今は横軸に角度θとしていましたが、5×5ピクセルの画面上には角度の単位はありません。あるのは横方向を表すピクセル単位かcm単(ピクセ ルをcmに変換)のみです。そこで、角度θをcmの単位にする良い方法がないのか考えてみます。


角度とラジアン

私たちが図形問題で角度を求めるときは30°とかの「度」の単位を用いてきました。この「度」はわかりやすく便利な単位なのですが、積分や微分とかの代数を用いた計算では不便きまりない単位であることは経験から理解できると思います。

このような時には、「ラジアン」という単位が用いられています。ラジアンは 下の図のように θ=s/r と定義されています。

したがって、半径をrとする円周は2πr、2πrの角度は360°なので

θ=s/r=2πr/r=2π となり

2π(ラジアン)=360°

となるわけです。

これにより横軸の角度の単位はラジアン単位に変更できました。

この関係を図にしてみました。ここでの周期は角度をラジアンに変更しましたから1周期は360°から2πに変わりました。

しかし、これでも横軸は角度からラジアンに変わっただけで、ピクセル単位か cm単(ピクセルをcmに変換)になっていませんから不都合です。下の図を見てください。

図の横軸はラジアン単位、その周期2πを距離の単位でT (cm)としますと、2πはTに対応していますので角度(θ)は距離(x)と なります。

2π:T = θ: x

         より

    θ=2πx/T

         となり

    y=sinθ=sin(2πx/T)

         となります。

これでy=sinθが距離の単位(cm)で表せるようになり、ピクセルの画像にも応用できるようになりました。ここで"画像はピクセル単位でcm単位ではな い"と言う人は、ピクセルをcm単位に直してみてください。
"ピクセルしかだめ!"な人は、x、Tをピクセルとして計算してください。



周期と周波数

周期とは波の山〜次の山(谷〜次の谷)までだとおぼえました。次は、周波数とはなにかを理解します。周波数とは単位(cm、秒など)当たりの波の回数だと思ってください。

波の周期が10cmであると仮定して話を進めます。

周期が10cmと言うことは10cmで1つの波であることですから、単位当 たりの波は(ここでは1cm)1/10波となります。この単位は(サイクル /cm)で示されます。cmをピクセル単位に変えると、(サイクル/cm) は(サイクル/ピクセル)となります。

2cmに1つの波のときの周波数は1/2(サイクル/cm)、2ピクセルで1つの波のときには1/2(サイクル/ピクセル)……となります。 周波数(u)と周期(T)の関係は
 T = 1/u
となることが理解できます。よって

y=sinθ=sin(2πx/T)= sin(2πx u)

とも書けます。

ここで重要なことを説明しますのでこれだけはおぼえてください。
私たちの観察する画像はピクセルによって表現 されています。1周期の正弦波を作るには1ピクセルではできません。最低2 ピクセルが必要になります。一番細かな正弦波は、2ピクセルで1周期となります。したがって、この周期は2ピクセルであるので周波数は1/2=0.5(サイ クル/ピクセル)となり、これが最高の周波数(最高周波数・ナイキスト周波 数)と呼ばれています。
したがって、デジタル画像にはこれ以上の周波数は含まれないことを理解して おいてください。