SPECT再構成の方法
SPECT画像を作り出すためには、シンチレーションカメラを身体の周りに360°(あるいは180°)回転させ、角度ごとの投影データを収集していきます。多くの施設では収集角度6°、1投影の時間は30秒程度で60枚の投影データ(プロジェクションデータ)を収集します。
この検査で得られた60枚の投影データを逆投影すればSPECT再構成画像ができるのですが実際にはそうはいきません。投影データをそのまま逆投影したのでは偽像がでてしまうからです。
逆投影について
円筒形の中心部にRIが封入されたファントムを配置して、シンチレーションカメラを360°回転させ90°毎の投影データを収集する場合を仮定します。
すると上図に書いたように4枚の投影データが得られます。
この投影データを逆投影してみます。
このように単に逆投影したのでは中心部にホットスポットがあるにもかかわらず、十字架を示すような像ができあがってしまいます。
これではもとの円筒形のファントムの像とはかけ離れた再構成画像になってしましますので、忠実なもとの画像を作るにはなんらかの方法を施す必要があります。
ここで使用させるのが再構成フィルタ(Ramp、Shepp-Logan、Chesreフィルタなど)なのです。
逆投影をグラフ上で考えてみます
十字架のような再構成画像をもとのファントム画像のようにするにはどうしたらよいのでしょうか?
ここでこの問題を解消する手段が再構成フィルタなのですが、その前にグラフを使用して逆投影の方法を考えてみます。
上の図は、投影データのRIのカウントを1、それ以外は0として逆投影した場合の座標上でのカウントを示しています。逆投影とはそれぞれの角度毎の投影データをもとの座標に戻してやる操作ですので0°方向の投影データと180°方向の投影データが重なりあって1+1=2
となります。中心部は4つの投影データが加算されますから1+1+1+1=4となるわけです。
この座標軸を画像にしたのが十字架となります。
このように逆投影された画像は中心部のカウントが最も高くなり、中心部から離れるにしたがい加算されるカウントが小さくなります。
実際には中心部にカウントが描画されなければならないのですが、逆投影すると周りにもカウントが現れてしまいます。この偽像(アーチファクト)をなんらかの方法で取り除く必要があります。
ここで登場するのが再構成フィルタなのですが、もう少し直感的にどうしたらよいのかを考えます。
上の図で赤数字(2)の部分に注目します。
a,b,c,d の0,1は投影データのカウントを示しています。
赤数字(2)に注目してください。
この部分はa方向からの1、b方向からの0、c方向からの1、d方向からの1が重なって2となっています。
1+0+1+0=2
もとの画像は赤文字(2)はカウントが0でなくてはなりません。2になったのは単純に逆投影されたから各方向のカウントが加算されて、あたかもカウント(2)となってしまったのです。
この2をもとの画像のように0にするためにはどのようにすればいいのでしょか?
bの投影データのカウントを変えてみます。同じようにdの投影データのカウントも変えます。
はじめのb、dの投影データは
となっています。
この投影データの0カウントの場所をー1カウントとして、次のように変えてみたらどうなるでしょうか?
すると4方向の投影データは
1+(−1)+1+(−1)=0
となり、、逆投影のカウントも上図になります。
このように、投影データを代えたことで、最初の赤数字(2)が(0)に代わりました。
同じようにa方向、c方向の投影データもb,dのようなものにすれば逆投影で加算された画像は下図のように中心が4で周りが0となるカウントの画像にかわります。
このような処理である程度のアーチファクトが取り除かれたわけです。
これが再構成フィルターの大まかな仕組みとなります。ここでは4方向のみで考えましたから簡単に解けましたが、60方向からの逆投影でアーチファクトを取り除くにはもう少し複雑になってきます。しかし、ここに述べた基本的な概念さえつかんでおけば後はどうにかなります。