前処理フィルタについて

前処理フィルタの概略

投影データは、体内から出てくるγ線によって画像となります。このγ線は放射性物質の崩壊によって得られ、時間当りのγ線の数はランダムで少ない量です。 したがって、これから出来上がる画像はザラザラしたものとなり、このザラザラした投影データからできるSPECT画像も雑音を多く含んでしまい診断には適しないようになります。(前処理フィルタなしでのSPECT再構成画像を作ってみればよくわかります。) そこで、ザラザラを取り除きSPECT再構成画像を観察しやすくするために使用されるのが前処理フィルタなのです。

a)画像のスムージングについて

いままでに「画像をスムージングする」との言葉を聞かれたことがあると思います。画像をスムージングとは"なめらかに"する方法であると誰でも感じると思います。では画像処理でのスムージングとは実際どのようにおこなわれているのか考えてみましよう。

b)フィルタとは

フィルタとは平面画面のそれぞれのピクセルに数値を入れたものです。分かり難いですか?最もなじみの深い9点スムージング(3×3マトリック)を例にして説明します。9点スムージングフィルタとは、3×3のマトリックスの画面作り、それらの9個のピクセルに数値(整数)を入れます。その数値は下の図に示す整数で、これがスムージングフィルタなのです。この数値の入れ方でフィルタの性質(特性)が変わります。下の図(a)は9点スムージングフィルタ(重み1,2,1)を示し、9個のピクセルに縦横のピクセル値が1,2,1の関係になるように整数をあてはめたものです。これが25点(5×5ピクセル)になると(b)のようなフィルタとなります。これも縦横の関係が1,2,1になっています。

c)フィルタリング(フィルタをかける)とは

フィルタリングするとは、撮像された「画像」を前述した「フィルタ」で処理することです。処理とは両者の足し算?、引き算?、乗除?……何かをすることなのですが……… 答えは畳み込みをおこなうのです。よくコンボルーションするとか重畳積分するとも言われます。数学的には

などとも書かれこの数式を見るともう〜ダメ!と思ってしまいます。でも、こんな式は無視しても平気です。畳み込積分(コンボルーションまたは重畳積分)を数式で考えるのでなく絵(図)で理解すればいいのです。では、この畳み込み積分を絵(図)で説明してみます。

@ はじめに3×3ピクセルのフィルタを準備します。
フィルタ(3×3)、撮像された画像(5×5)のそれぞれのピクセル値は説明を簡単にするために記号で示しました。

A 次に、撮像された画像(普通は64×64〜512×512ピクセルなのですが、説明を簡単にするために)5×5ピクセルの画像をもって きます。

これからフィルタリング(畳み込み積分)をおこなってみます。

B はじめにスムージングフィルタを横方向に折り返します。

C 次に縦方向に折り返します。

折り返すとは数式のh(x-x' y-y')を意味しています。

これで、@Aが終了しました。

D 次は折り返したフィルタを撮像された画像(5×5ピクセル)に重ねます。
(f1の上にh9、f2の上にh8・・・f7の上にh5・・・f13の上にh1が乗るように重ねます。)
数学的解釈では配置の最初の位置はこの位置ではないのですが、畳み込みの手順を簡単に説明するために、畳み込みをはじめる最初の位置をここにしました。

E ここで計算をおこないます。
3×3のフィルタの裏には投影データがあります(h9の裏にはf1、h8の裏にはf2・・・・・h1の裏にはf13)。それぞれのピクセル値を用い計算してフィルタリングされた新しいピクセル値を求めます。撮像された画像のピクセルf7の値はフィルタリングされるとg1になります。

g1=(h9×f1)+(h8×f2)+(h7×f3)+(h6×f6)+(h5×f7)+(h4×f8)+(h3×f11)+(h2×f12)+(h1×f13)

F 次に右へ1ピクセル移動させ、同様な計算をおこないます。
f8の値はg2になります。

g2=(h9×f2)+(h8×f3)+(h7×f4)+(h6×f7)+(h5×f8)+(h4×f9)+(h3×f12)+(h2×f13)+(h1×f14)

Gまた右に1ピクセル移動させます。
f9の値はg3になります。

g3=(h9×f3)+(h8×f4)+(h7×f5)+(h6×f8)+(h5×f9)+(h4×f10)+(h3×f13)+(h2×f14)+(h1×f15)

H右端まできたので、一列下げて左端から同様な計算をおこないます。
f12の値はg4になります。

g4=(h9×f6)+(h8×f7)+(h7×f8)+(h6×f11)+(h5×f12)+(h4×f13)+(h3×f16)+(h2×f17)+(h1×f18)

Iこれの繰り返します。

J全て移動し終わるとフィルタリングされた新しい画像ができます。
投影データ(5×5)のピクセル値f1〜f25はフィルタリングされた画像g1〜g9となります。

これが畳み込み積分を意味するのです。

(撮像された画像(5×5)は畳み込みされることにより、3×3の画像になってしましました。これはおかしいことです。5×5ピクセルの画像は畳み込みされても5×5ピクセルの画像にならなければ困ってしまいます。いまは畳み込みを説明ではこのようになったのですが、本当はこうではありません。)